専門家コラムColumn

Season2(4)FAQの構築におけるAIの活用について

2021.03.29

 前回は、AIによる電話自動応答の現状と効果的な活用方法について解説しました。

イメージコロナ禍で社員のオフィスへの出勤制限が求められる中、AI電話自動応答やチャットBotを活用し、お客様からの問い合せ対応の自動化・省力化に取り組む企業が増加しています。

 しかし、現行のAI電話自動応答やチャットBotは、予め登録したFAQ(想定質問と回答の組合せ)の中からお客様の質問に合致しているものを選び出し、回答を提示するタイプのものが大半です。例えば、お客様からの質問への解釈力に優れたAIを搭載したチャットBotを導入していたとしても、該当するFAQが登録されていなければ、回答することはできません。従って、AI電話自動応答やチャットBotの機能性を左右するのは、システムの性能以上にFAQの充実度合だと言っても過言ではありません。

 FAQの構築は、過去のお客様からのお問い合わせ履歴がどんな形で保存されているかにも拠りますが、かなり手間が掛かる作業です。お問い合わせの内容が簡潔に要約されてシステム等に保存されていれば、あまり手間を掛けずに構築することができますが、筆者がこれまで経験した限りでは、そういった企業は少ないと思います。
 お客様とメールやチャットでやり取りをした原文を読み、質問の内容を一件ずつ抽出していくケースも少なくありません。電話での対応の録音音声を聞き起こすところからスタートするようなケースもあります。そのようにして「質問」を洗い出した後は、その内容を一件ずつ確認し、整理する作業を行わなければなりません。その“整理する作業”の一例をご紹介します。
 【図表1】のカー用品ショップへの問い合わせの事例をご覧下さい。お客様から「A」から「D」までの4つの質問がありました。しかし、ほぼ同じ内容の質問だったため、同じ回答がされています。このように同じ意味の質問でも、お客様によって表現や言い回しが異なります。従って、FAQは「質問」と「回答」の組み合わせが「複数:1」になるのが一般的です。

【図表1】

カー用品ショップ問いあわせ例1

 このような応対履歴の情報からFAQを構築する場合、【図表2】のように、“「質問B」から「質問D」は、「質問A」と同じ内容の質問で、「回答A」に紐づけられる”ということを整理していく作業が必要となります。

【図表2】

カー用品ショップ問いあわせ例2

 更には、必要に応じて質問を集約する、質問の文言を適切な言葉に修正するなどの作業を行います。(【図表3】参照)

【図表3】

カー用品ショップ問いあわせ例3

 このように、FAQの構築は、人による文章の読解や編集などを必要とする手間が掛かる作業です。しかし、この作業もAIの活用による工数削減が可能となってきています。

 東芝デジタルソリューションズ(株)が提供するWebアプリケーション「RECAIUS ナレッジエディタ」は、AIを活用した文書解析技術によりFAQの作成をサポートします。
 
当社では、この『RECAIUS ナレッジエディタ』(以下、「文書解析AI」と表記)を活用してFAQを構築する『AI FAQ構築サービス』を昨年の10月から提供しています。サービスの流れを簡単に説明します。

【図表4】『AI FAQ構築サービス』サービスの流れ

AI FAQ構築サービスの流れ

 素材となるデータは、eメールやチャットでやり取りした、お客様からの問い合わせの応対履歴です。最初の工程は、このデータを「文書解析AI」で解析するためのデータクレンジングです。具体的には、素材データの「質問」と「回答」以外の余分な文章を大まかに削除する作業です。この作業は、「人」が行います。

 次の工程が「文書解析AI」による解析です。この工程では、3つの作業が行われます。

 一つ目の作業は、「質問」と「回答」の文章の整備です。「人」が大まかにクレンジングした文章を「文書解析AI」が解析し、「質問」と「回答」以外の不必要な部分を更に削除し、文章を整備していきます。
 二つ目の作業は、「質問」のグループ化と集約です。整備された「質問」の文章を解析し、類似する質問をグループ化します。更に指定した数に「質問」の数を集約します。つまり、前述の「カー用品ショップへの問い合わせの事例」で説明した〈作業①〉と〈作業②〉を「文書解析AI」によって行います。
 三つ目の作業は、既存のFAQとの重複確認です。「文書解析AI」が新たに抽出したFAQと既存のFAQとの突き合わせを行い、重複している可能性が高いものにフラグを立てていきます。以上が、「文書解析AI」を活用して行う作業です。
 最後の工程が、「人」による確認・修正などの作業です。「AI」による文書解析は、「人」と比べて作業スピードは格段に速いですが、文章を正しく解釈するなどの能力は、まだまだ「人」にはかないません。「人」の目で内容を確認し、誤りがあれば修正していきます。
 この「文書解析AI」と「人」との協働のモデルにより、FAQ構築の作業工数が、従来の工数との比較で、半分から3分の2程度に削減されています。

イメージ自社のサービスの宣伝になりますが、当社では、この削減された工数を「サービス価格と納期の圧縮」というかたちに反映させ、お客様に価値の還元をしています。ご興味がある方は、是非お問い合わせ下さい。

 今後、当社では、「AI」と「人」との協働により提供していく企業のお客様対応支援のサービス群を『AIクラーク』という新たなブランド名称で提供していきます。本稿でご紹介した「AI FAQ構築サービス」も、その『AI クラーク』を構成するサービスの一つという位置づけです。 次回は、『AIクラーク』の説明を通じて、企業のお客様対応におけるAI活用について総括していきたいと思います。
 

AIにより企業とお客様とのコミュニケーションはどう変わっていくか

西脇 紀男 Norio Nishiwaki

 1993年大手コールセンターベンダーに入社。経営企画、営業企画、CRMコンサルティング部門の部門長を務める。
2010年キューアンドエーグループに入社。経営企画、マーケティングソリューション事業などの部門長を経て、2017年から2019年はコンタクトセンター事業でのAI活用を推進するAI事業戦略本部の本部長に。
現職でも引き続き、AI活用やオムニチャネル対応など次世代型コンタクトセンターのモデル構築、事業化に取り組んでいる。
立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科修了 経営管理学修士(MBA)

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