専門家コラムColumn

Season2(2)「AI電話自動応答」の現状と活用方法 ①

2020.10.28

コロナ禍の中、一部の企業のコールセンターでは、オペレーターの出勤制限や安全確保により、十分な受付体制を構築できない状況が続いている。そのため、AIによる電話自動応答(以下、AI電話自動応答)やチャットボットなどのシステムツールを導入し、顧客対応の自動化や省力化を推進する企業が急増している。
そうしたニーズの拡大に対応し、当社も6月末に『AI電話自動応答サービス』というAIを活用した電話自動応答のサービスを新たにリリースした。今回と次回の2回に渡り、AI電話自動応答の現状と有効な活用方法について説明していきたい。

 これまでも、コールセンターなどに電話を掛けると、ガイダンスが流れ、それに従い電話機のプッシュボタンで番号を選択していく形式の「自動応答」を経験した方も多いだろう。IVR(※ Interactive Voice Responseの略)と呼ばれる音声自動応答装置だが、先ずは、それとAI電話自動応答との違いを簡単に説明したい。大まかに言うと、IVRとAI電話自動応答の大きな違いは、二つである。

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 一つ目は、登録できる情報の違いだ。IVRで登録(認識)できるのは、お客様が電話機のプッシュボタンなどで入力した数字の情報のみである。一方、電話自動応答は「音声認識システム」を装備しているため、お客様が話した言葉を文字情報として認識させることができる。

 例えば、お客様が電話をかけてきた用件を確認する場合、IVRは「商品の注文は“1”」、「返品の返品については“2”」・・・などと長いガイダンスを聞いて番号を入力しないと先に進めない。このやり取りにイライラしたことがある方も多いだろう。それに対しAI電話自動応答は、お客様から直接「商品の注文」などと用件を話してもらい、その言葉を認識して対話を進めることができる。従って、IVRと比べて通話時間を短縮させることが可能となり、お客様のイライラも軽減することができる。

 また、例えばお客様から「名前」や「住所」などの情報を聴取したい場合、IVRでは音声の録音は可能だが情報(データ)として登録させることはできない。しかしAI電話自動応答は、音声認識システムにより文字化して情報として登録(受付)すること可能である。従って、通信販売の注文受付などの対応に活用することも可能だ。

 二つ目の違いは、応答できる情報の違いである。IVRで応答できる内容は、予め録音された音声のみである。一方、AI電話自動応答は、「音声合成」というシステムを装備しており、文字情報を人間が話すような発音で読ませることができる。活用事例として、お客様が話した内容を音声認識システムで文字化し、それを音声合成で読ませるという活用方法により、お客様が話した内容を復唱確認させることができる。前述の通信販売の注文受付などでは、この機能によってお客様の名前や住所などの重要な情報を誤って受付してしまうリスクを軽減することが可能だ。以上の二点がIVRとの大きな違いである。

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しかし、AI電話自動応答も予め設定したシナリオに則った対応しかできないという点では、本質的にはIVRと同じである。『音声チャットBot』と呼ばれることもあるが、文字通りチャットBotの音声版とイメージして頂くのが実態に近い。
【図表1】は、AI電話自動応答システムのシナリオ編集画面のイメージだが、このように樹形図型の対話シナリオを構築して会話のフローを設定していく。従って、お客様からこの分岐のシナリオに無い内容が話された場合、応対が進まなくなってしまう。そのため、多様な用件で電話が入ってくるお客様相談窓口の対応などは、網羅的にシナリオを構築するのが難しく、AI電話自動応答で応対を完結させるのが難しい分野である。

 このように機能に限界があることから、これまでは「期待していたよりも応対できる範囲が限られている」と評価され、導入を検討したものの見送られるというケースも少なくなかった。

しかしコロナ禍の今、発想を転換し、あるいは先入観を捨て、こういったIT技術を活用して少しでも人の応対工数を削減していく工夫が必要となっている。コロナ禍でお客様側の理解や受け入れる姿勢が高まっている今こそが、ある意味、その推進の良い機会であるとも言える。

 冒頭でも述べたように、6月末に当社も『AI電話自動応答サービス』をリリースした。そのサービス構成には、従来のAI電話自動応答の弱点を補完し、何とかこのコロナ禍で活用を拡大させていきたいというコンセプトが反映されている。

 次回は、そのサービス構成の説明を通じて、AI電話自動応答の有効な活用方法について提案・提言していきたい。

AIにより企業とお客様とのコミュニケーションはどう変わっていくか

西脇 紀男 Norio Nishiwaki

ディー・キュービック
AI LABOリーダー

1993年大手コールセンターベンダーに入社。経営企画、営業企画、CRMコンサルティング部門の部門長を務める。
2010年キューアンドエーグループに入社。経営企画、マーケティングソリューション事業などの部門長を経て、2017年から2019年はコンタクトセンター事業でのAI活用を推進するAI事業戦略本部の本部長に。
現職でも引き続き、AI活用やオムニチャネル対応など次世代型コンタクトセンターのモデル構築、事業化に取り組んでいる。
立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科修了 経営管理学修士(MBA)

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